劇場版SHIROBAKO の感想と、このアニメが伝えたいこと、信じるものについて
忘れもしない、5年ぐらい前に放送されていたTV アニメ版SHIROBAKO の最終話の手前ぐらい。たぶん、23話だったと思う。
その時、誰も残っていないオフィスでSHIROBAKO を流しながら仕事をしていた私は、坂下しずかのセリフの収録時に宮森あおいが泣くシーンに釘付けになっていた。
目に涙が溢れ、画面をまともに見ることができず、こんなにアニメを見て泣いたことがあるかというぐらい号泣した。(その数年後、「宇宙よりも遠い場所」で自己記録を更新することになる。)
ちょうど当時の私は、WEB のデザイナーやエンジニアを経た後で、ディレクションが主な仕事になってきた頃だった。
作っているモノは違えど、SHIROBAKO の主人公である宮森あおいの主な仕事である進行管理という業務の面白さ・難しさ・キツさに共感できるポイントが多くあり、もちろん深夜アニメが好きだったので、SHIROBAKO は私にとっても特別な作品である。
SHIROBAKO は素晴らしいアニメなので、本当に多くの人に見て欲しい。
べつに私がアニメが好きだからとか、似たような仕事をしていたからとか、そういう個人的な想いだけの話ではない。客観的に見て、この作品は本当に面白いし、元気になれる。
特に、
- アニメが好きな人や興味がある人。見てきた年数や本数は問わず。
- 何かしらモノを作る仕事をしている人。クリエイターでもアーティストでも。
- 何か頑張りたい人。夢を追いかけるとか、そんな感じの人。
すげー適当に書いたけど、こういう人には、めっちゃ見て欲しいと思う。
そんなSHIROBAKO の劇場版が公開されたので、公開初日に見てきた。
以下、もちろんネタバレを多少は含むと思うので、本当に楽しみにしている人は読まない方が良いです。
SHIROBAKO というのは簡単に説明すると、アニメ制作の裏側を描いたアニメだ。
主人公はアニメ業界に憧れて飛び込んできたばかりの宮森あおい。制作進行を担当していて、私が属しているWEB 業界ではディレクターなどと呼ばれる。
ディレクターの皆さんなら誰もが一度は経験したであろう諸々。
頭がおかしいとしか思えないスケジューリング。ギリギリまで決まらないアサイン。クライアントや権利元からの無茶な要望。どう考えてもどうにもならねえな、という時の世界が終わるような心境。
そんな諸々をドタバタしながら乗り越え、作品を完成させるために突っ走っていく宮森あおいの姿が描かれている。
そして、劇場版SHIROBAKO を見て改めて感じたこと。
TVアニメ版の時からそうだったけど、この作品が一番に伝えたいのは、「アニメだって人間が作っている」ということなんだと思った。
あらすじに悩みまくってボロボロになる脚本家。前作の失敗から引き篭もってニートのようになってしまう監督。同じく前作の失敗に腐ってゲームセンターに入り浸る原画マン。仕事がしたくないからすぐ釣りにいってしまったり、ロードバイクに乗って現実逃避ばかりの制作パートナーたち。
あえて言うと、割とクソみたいな人間ばかりが集まって力を合わせて一つのアニメを作っていくんだけど、私も含め多くの人間は何かしらクソだ。
そういった、キャラクターの人間らしさにフォーカスし、それを面白おかしく描き、こうやって色んな人間が悩んだり腐ったり考えたり頑張ったりしながら、アニメというものは作り上げられているんだよ?という裏側をSHIROBAKO は描く。
もしかしたら私達は、多くの人間が作り上げた作品を見る時、その裏側に注意を払うことを忘れてしまいがちになるのかもしれない。
一人のシンガーソングライターが路上で歌っているだけの曲なら、それを歌っている人間に注目することが簡単だ。
でも、例えば大きな建築物やハリウッド映画のような作品に関わる人間の数は途方もなく多く、その一人一人がどのようなことを考えているかなんて想像することも難しい。
だからSHIROBAKO のようなアニメは面白い。普段は想像もしないようなことを、面白おかしく描いてくれるからだ。
劇場版SHIROBAKO の感想は、SHIROBAKO はSHIROBAKO だった、ということ。
SHIROBAKO の魅力が全て詰まっていて、それ以上でも以下でもない。期待を裏切らない代わりに、大きなサプライズもない。終始、SHIROBAKO が展開され、SHIROBAKO に終わるという感じだった。
あと個人的に印象に残っていることとかを箇条書すると、
- 出だしの悲壮感が強くて心配になるレベル
- 宮森あおいの部屋が汚え(仕方ないよね)
- 遠藤涼介のクズ感が強すぎる(嫁の言動は非現実的)
- 今回は特に木下誠一とゴスロリ様が好き
- アクションが豊富で見応えがあった
- 契約ユルすぎ、大人ちゃんとしろ
- エビデンス残しといて本当に良かったね(わかる)
みたいな。
なので満足だし、べつにそれ以上のものを求めて見に行くなどということもないので、良かったね、と思う。
以前から、私はアニメを見ない人にオススメのアニメを聞かれた時にSHIROBAKO を挙げることが多い。
それはアニメそのものの魅力が、ちゃんと表現されているからだ。
そして、見ると元気になれる。人間を勇気づけ、明日に向かわせる。
アニメとはそういうものだと、SHIROBAKO は信じているんだろう。