「ふむ、転職かな」転職の理由を冷静に整理し判断する手順をまとめた
「ちくしょう、転職だ。」
と、感情に任せた勢いとは正反対である。
論理的に、合理的に、打算的に。静かに、冷静に、粛々と。まさか私が転職を考えている等とは、誰も気がつかない。
「ふむ、転職かな」
私にとって良い転職の始め方とは、そういったものだ。
私は週に一度は必ず転職を検討する転職検討愛好家である。
それは今の職場で成長できているとか、待遇に満足しているとか、そういう現状とは関係がない。
いくら理想の職場だろうが、上司に恵まれようが、部下が可愛かろうが、私は私の習性に従って定期的に転職を検討するのだ。
だから毎週末、今の職場を辞めるかどうか考えている。そのようにして今の職場でも4年間、働いてきた。
ちなみにフリーランスの時も同様に、毎週末に続けるかどうかを考えていた。
だって、ずっと同じ環境で働き続けるのは、つまらないから。
思い切って環境を変えることで得られる成長や出会いの面白さを、中毒症状のように求めてしまうから。
他にも色々と理由はあるけど、端的に言うと「つまらないから」に集約される。
ということで、そんな転職検討愛好家である私なりの、転職を考える時に使用するフレームワークをまとめておきたいと思う。
目次
- これは「メリットが残っているかどうか」を洗い出すフレームワーク
- 手順(フレームワーク)のまとめ
- Step.1 一時間ぐらいの時間と紙とペンを用意する
- Step.2 紙にペンで下記の項目について書き出す
- Step.3 メリット・デメリットをピックアップする
- Step.4 ふむ、と眺める(検討する)
- それでも判断に困るなら
- あとがき
これは「メリットが残っているかどうか」を洗い出すフレームワーク
これからフレームワークについて長々と語る前に、とりあえずポイントを先に一言でまとめておきたい。
それは、今の職場で働き続けるメリットがまだ残っているかどうか、だ。
「何を当たり前のことを」と思われるかもしれないが、いや本当に当たり前のことなのである。しかし当たり前のことでも、「ちくしょう、転職だ!」と頭に血が登ると冷静に把握しきれない。
なので、以下に示すフレームワークは「メリットが残っているかどうか」を冷静に確認するための手順とも言える。
静かに、冷静に、粛々と確認していこう。
手順(フレームワーク)のまとめ
- 一時間ぐらいの時間と紙とペンを用意する
- 紙にペンで後述の項目について書き出す
- メリット・デメリットをピックアップする
- ふむ、と眺める(検討する)
以上。これも先にまとめておいた。
ここで強調しておきたいのは、書く時には感情的になっても良いというか、むしろ感情的に書き出した方が良いものもあるということだ。
冒頭で「論理的に」「冷静に」等と言っているが、それはあくまで検討フェーズの話である。感情的に書き出したものを含めて全体を眺め、そこで冷静になることができる。
Step.1 一時間ぐらいの時間と紙とペンを用意する
- 一時間ぐらいの時間
- A4 ノート見開き2ページぐらい(つまりA3 の紙一枚)
- ボールペン
用意するものはこれだけだ。この時点で何をやるか、凡そ想像がつくと思う。
そう、紙にペンで書きまくるのである。なので紙とペンがあればいい。
あと強いて言うなら、一時間ぐらいは集中できる時間を用意すると良い。
転職検討愛好家である私は毎週末に5分ぐらいで終わってしまうが、それは無数の反復の結果、思考プロセスが自動化されているからだ。何か格好つけようとしたけどよく分からないので、とりあえず一時間ぐらいあればいい。
Step.2 紙にペンで下記の項目について書き出す
用意した紙に下記A.~I. の9つの項目を書き出していこう。項目ごとに書き出すコツも含めて、まとめておく。
A. 貴方の給与・待遇
まず貴方は、いくらの給与を貰い、どのような福利厚生を受けているか。
ここでは月収と年俸・賞与の額に加え、今の職場から待遇として与えられている社会保険・有給休暇の日数などの待遇を全て具体的に書き出す。
その他にも会社から特別に与えられていると感じるなら、例えば「学習用の書籍購入が無料」「社長が毎週お小遣いを10,000円くれる」等を書き出して欲しい。
B. 業界内の他社・同世代の給与・待遇
貴方と同じ職種の業界内で、貴方と同じぐらいの年齢の人間は、どの程度の給与をもらい、どんな待遇を受けているか。
例えば貴方がデザイナーで28歳なら、二十代後半のデザイナーの平均年収を検索などで調べてみると良い。こういった情報は、求人サイト・転職サイトの類にまとめて掲載されているものが見つかることが多い。
また、国が情報を公開しているデータベースなども多くある。
C. 貴方のビジョン・目標
貴方は将来的にどうなりたいか、どのような価値観を是とするか。辿り着きたい職種やポジションがあるなら具体的に、そこまでの道のりまで書き出してみよう。
ちなみに私は今すごくカレー屋になりたいので、例えば都内でカレー屋を出店するのに凡そ必要な資金はいくらかとか、それをどう調達するか等をダーッと書き出している。
一般的には例えば「子育てと仕事を両立したい」「働かずに給与が欲しい」等もビジョンっちゃあビジョンのうちだろう。軽い気持ちで書き出せばいいと思う。
D. 会社のビジョン・目標
C. とは逆に、貴方が所属している組織や労働環境は、何を掲げて何処に向かっているのだろうか。
小さい会社であれば分かりやすい場合も多く、逆にそんなものは存在しない場合もある。逆に大きい会社であればあるほど抽象的で捉え辛いものである傾向がある気はする。そういう時は自社サイトや社長インタビューとかを読むとか、会社ではなく部署などのセクション単位で考えても良いと思う。
E. 貴方の通勤・就業時間
現在の貴方は通勤にどれぐらいの時間をかけ、平均して何時間ぐらい働き、その結果として余暇の時間がいくら確保できているか。
これらもA. と同じく数字で出せるので、書き出しやすいと思う。
F. 職場の人間関係
貴方の職場・部署・チームにはどのような人が多く、上司はどのような人で、部下はどのような人だろうか。また、彼らと貴方の関係性はどうだろうか。
良好か、上手くいかないか、信頼があるか、むかつくか。ここは最も感情的に書き出すべき項目である。具体的な名前を挙げて書き出せば良い。
G. プライベートの人間関係
貴方の家族・恋人・友人・知人など、現状の交友関係はどうなっているか。今の職場で働くようになってから、それらの交友関係は変わっただろうか。
現状の人間関係に満足しているだろうか?満足していないなら、どのように変化すれば満足するだろうか。
H. 貴方の現状のスキル
貴方が現時点で持っている職能は何か。またそれはどの程度のレベルのもので、どの程度の評価を得ているか。主観と客観、両方を書き出す方が良い。
営業スキル・企画力・専門技術などのざっくりしたものから、書き出せるなら具体的なところまで書き出そう。
I. 職場で得られるスキル
今の職場で働くようになってから、貴方が得たスキルは何か。そして、この先も今の職場で働くことによって得られるスキルとは何か。
また、そのスキルとは得られることが保証されているのだろうか。ポジションが変われば、上司が変われば、得られなくなってしまうものではないか。
Step.3 メリット・デメリットをピックアップする
Step.2 で書き出したものを見渡して、
- 今の職場で働き続ける価値に繋がっていると思えるもの
- 今の職場を辞める動機に繋がっていると思えるもの
この2つを、それぞれピックアップしてみよう。
丸をつけるでも良いし、改めて別の紙に書き写してもかまわない。
例えばE の項目で書き出した「通勤時間が60分」がウザい、耐えられないと感じるなら、デメリットの方にピックアップする。
ピックアップするものは、べつに何個でも良い。
Step.4 ふむ、と眺める(検討する)
さて、Step.1 で用意した紙は貴方のメモ書きで一杯になっただろうか。
あとは、それを改めて見渡しながら考えるだけだ。
メリットとデメリットは釣り合っているか、デメリットの方が明らかに大きくないか、それでもメリットに価値はあるのか。
全て書き出した今なら、ある程度は論理的な判断ができるはず。
見渡してみて「ふむ、転職かな」と決断するも良し。「もう少し続けてみるか」と決断しても良し。それを貴方が決めるだけだ。
それでも判断に困るなら
フレームワークとか冷静に判断するとか言っておいて元も子もないように聞こえるかもしれないが、それでも判断に困るなら、後はもう気持ちの問題である。
こんなものは、気持ちの問題だ。
(大事なことなので二回言いました。)
そもそもこういった人生における決断に、数字で分かりやすいような答えなど存在しない。
ただ、感情的になって勢いで判断するか、冷静に整理して判断するか、それだけの違いであり、そのためのフレームワークである。
そこで改めて「ちくしょう、転職だ」と判断するのも良いだろう。
判断に困っていること自体がモチベーションに問題がある状態なので、それなら気分を改めて新しい職場で気持ちよく働ける可能性を探したくないですか。
私はそう思いますが。
あとがき
気がつく人も多いかもしれないが、この記事に書いたフレームワークは「ビジネスモデル・キャンバス」に大きな影響を受けている。
ビジネスモデル・キャンバスについては、この記事で詳しく紹介している。
何かを検討・判断する時に、その何かを構成する全ての要素を書き出して並べること。
この単純なフレームワークが様々な物事に応用できるということに気づいた私は、ビジネスだろうが転職だろうが何だろうが、考える時に全て書き出すという行為を可能な限り実行するようになった。
今回は、その一つをまとめて紹介しただけだ。
あと、これは私の偏見かもしれないけど、こういう時はPC にインストールされたエディタではなく、紙にペンが良い。
きっと紙にペンの方が、脳内の考えを、そのままアウトプットするのに向いている。
エディタでは「編集」の概念が混じり過ぎてしまうのだ。
生搾り状態の思考を白いノートにぶちまけて、じっと眺めてみよう。
意外と価値がある行為だと、思ってもらえると嬉しい。