2,000万円~規模のWEB 制作案件を連続でやり切った後に思うこと
イニシャルで2,000 万円~規模のWEB 制作案件を、また一つやり切った。
去年の夏から始まった案件で、全体予算は1億円ぐらい。
そのうちシステム開発が8,000万円ぐらいで、残りのフロントエンド側が2,000万円ぐらい。
そのフロントエンド側の、プロジェクトリーダーなのか何なのか、とりあえず制作方針の立案や現場指揮が私の主な仕事だった。
この一つ前にも同じような規模の仕事を一つやり切っており、一昨年あたりから連続でやっているようなイメージだ。
(勿論だけど、私一人の力でどうにかなっているような案件ではなく、統括プロジェクトマネージャー様・プロジェクトマネージャー様・プロジェクトマネジメントオフィス様・ディレクターの皆様・デザイナーの皆様・フロントエンドエンジニアの皆様・バックエンドエンジニアの皆様の尽力の果てに何とかなっている案件である。)
目次
疲れた(とても)
一般的に、30人前後の規模の制作会社(表向きは)に所属していると、単発では大体このレベルが自力で捌き切れる最大規模の案件となり、それも年に2~3本あるかないかのペースだろうと勝手に思っている。
とりあえず納品が完了した、という電話をプロジェクトマネージャー様から受けた直後から、それまで常に臨戦態勢だった精神の糸が思いっきり切れた。
一気に気怠さが押し寄せ、肩が重くなり、ただぼんやりとディスプレイを眺めることしかできなくなった。
一つ前の同規模の案件では、そんなことはなかったのだが。
今回は並行して走っていた案件が多かったこともあり、とにかく疲れた。
かと言って、べつに規模が大きい案件だから何が特別ということはない。
基本的なことを基本通りに、きっちりやっていけば終わるのだ。
結局それが難しいというか、人間は怠惰なので、きっちりやることなどできない。
その基本的なことがきっちりできていないことによる綻びが、規模が規模なだけに、終盤に近づくほど倍々になって膨れ上がってくる。
一つの些細な修正による影響範囲が広過ぎる、もしくは特定できない。
結果的に影響範囲を限定するため、その場凌ぎの修正を重ねることになる。
基本的なことができていないと、その次の基本を守ることができないのだ。
そして基本から外れた属人的なルールがプロジェクト内で横行することとなり、引き継ぎが困難となり、特定のメンバーの負荷が高まっていく。
ブラックボックスとなったソースコードを叩き割って中身を見てみると…その頃には既に手遅れとなっているはずである。
…みたいなことに、最終的にならなくてよかった。
途中、特に終盤、まあ色んな事があって人に迷惑をかけたりもしてしまったのだが、結果的には納期は守れたし大きな問題も起きていない(と思いたい)。
ということで最後に、こういった規模の案件における見積りやら体制やら勘所について、ログとして簡単にまとめておくことにする。
見積りについて
はっきり言って、見積り金額はどんぶり勘定に近い状態のままFIX することが多い。
これは案件規模の性質上、ある程度は仕方がないことと言えるし、クライアントもそれを分かっている。
規模が大きい故に、正確な見積り金額を算出するためには時間が必要だ。
しかしクライアントの予算確保の都合から十中八九、そのような時間はない。
与えられた概要と、少ない時間で調査し切れる範囲から想定できる金額を「概算」というテイで出すのだが、ほぼそれでFIX となる。
なので再び内容を精査し正値の見積り金額を算出する機会は無いと思っておいた方が良い。
良いか悪いかは置いといて、最初で最後と意識し、概算だからと言って気を抜かずに見積もることだ。
体制について
営業やら何やらという部分の話は抜きにして、実際に納品物を作り上げる現場の人間、プロジェクトリーダー以下の体制は、大体このような感じである。
・プロジェクトリーダー(総指揮):1名
∟ディレクター(進行管理 / 設計 / 品質管理):2名
∟デザインチーフ(設計 / アートディレクション):1名
∟デザイナー(デザイン):2名
∟フロントエンドチーフ(設計 / フロントエンドエンジニアリング):1名
∟フロントエンドエンジニア(マークアップ / スクリプティング):2名
これぐらいアサインされていれば、手厚いと思う。最低でも何とかなる。
ただし、全てのメンバーが案件期間中フルコミットできるような予算もなければ、その必要もない。
勘所について
もちろん、初動だ。最初から本気を出すこと。
納品が半年以上も先だからといって最初を様子見すると、絶対に後から後悔することになるとnico0927 という人も言っていた。
人間は怠惰なので、案件期間中を常に集中し隅々まで神経を張り巡らせたまま過ごすことなど不可能である。
ではどこにピークを持ってくるかというと最初の1~2ヵ月で、これはshould ではなくmust だ。
案件期間が長いので、途中で色々なことが起こる。
今、頑張っても、どうせ後でひっくり返るのでは、と思うかもしれない。
しかし、そうじゃない。
その「後でひっくり返った時」に、最初の1~2ヵ月の頑張りが、必ず生きてくるのだ。
具体的に何を頑張るのかというと、「誰が何をどの範囲までやるか」ということを徹底的に掘り下げ、明確にすること。
とても基本的なことが故に難しく、そもそも人間は怠惰なので、これができないが故に殆どのプロジェクトは炎上する。
人間は怠惰だ
プロジェクト期間が長いと、人間の本性が現れやすい。
人間は怠惰で、まだ何とかなると思い込みがちで、実は何とかならないのではないかという現実をなかなか直視しようとしない。(私のことではない)
直視したところで、その現実に立ち向かう気力が、プロジェクトも終盤となるともう残されていない。
なので初動が死ぬほど肝心なのだ。
これは夏休みの宿題ではないので、頑張った結果の一ヶ月後に、誰が何をどの範囲までやるかが分かりませんでしたというわけにはいかない。
分からないのであれば分かる人に聞き、それでも分からなければとりあえずヤバイと騒ぎ、それでも駄目なら潔く断ることである。
「戻るぞ。今のオレ達では、奴等を倒せない。」
という、HUNTER✕HUNTER 19巻のハギャの判断を思い出し、勇気ある撤退をすればいい。
それができなかったプロジェクトもまた、炎上する。