アニメ感想:今期の最右翼、ゾンビランドサガの衝撃 ー ゾンビはアイドルの夢を見るか

アイドルを夢見る女子高生が、オーディションへの応募書類を抱えて元気よく家を出ていく。爽やかな朝、眩しい太陽、期待と不安・可能性に満ち溢れた一日が、今日も始まろうとしていた。

直後、衝撃の展開。このアニメがまともだったのは、せいぜい第一話の開始1分ぐらい迄だった。次々とテンポよく繰り出される、不気味な洋館・ゾンビ・謎のプロデューサー・アイドル・佐賀・デスメタルにヒップホップ。

 

誰もが、ぶっ飛んだアニメが始まったと思った。

ゾンビランドサガ ー それは歌って踊れて笑えて泣ける、正統派ごった煮アニメ。

どこにでもあるようで、同じものは二つとない衝撃。

 

 目次

 

あらすじとか

この記事を書いている時点で第二話までしか放送されておらず、かつネタバレし過ぎると面白くないので最小限に留めておく。

 

主人公の源さくらは、どこにでもいる平凡な女子高生。テンプレ中のテンプレ、アイドルを夢見る女子高生だ。

それが、気がついたら嵐の中の不気味な洋館にいた。そして、ゾンビに襲われる。

ほうほうの体で逃げ出し、たまたま通りかかった警官に助けを求めるも、予想外のリアクションを受けて再び意識を失ってしまう。

どこからともなく現れたサングラスの男に助けられ、目覚めた先で告げられる衝撃の事実。

お前はアイドルになれ、そして佐賀の街を救うのだ。

 

以上、これだけでも「なんかおかしい」と思うはず。

脈絡が無いと言うか、ところどころで話が飛んでいて掴みどころが無いように感じるかもしれない。

 

しかしゾンビランドサガは、その異様なテンポの良さ、小難しい説明のショートカットに加え、「シュタインズゲート」の岡部倫太郎で有名な声優・宮野真守の怪演により、とんでもなく見やすく・分かりやすく・楽しい作品に仕上がっていると感じる。

 

そう、楽しいのだ。見ていて、楽しい。

それがゾンビランドサガの、本当に良いところだ。

 

正統派ごった煮アニメの血統

前述の通り、この作品には様々な要素・属性が含まれている。

ゾンビとアイドルというだけでも意味が分からずお腹がいっぱいなところに、町おこし・デスメタル・ヒップホップ、恐らく今後も様々な要素が投入されてくるだろう。

こういったアニメ自体は特に珍しくなく、例えば「シュタインズゲート」だってタイムリープだけが要素の作品ではないことは見れば分かる。

 

多くのごった煮アニメに共通するのは情報量の多さとパロディだと思うんだけど、ゾンビランドサガも同様で、そこが見ていて楽しいところだ。

 

かつ「正統派」という冠をつけているのは、しっかりと根底に普遍的なテーマが流れていて、そこをブラさないから。

例えば「シュタインズゲート」の根底に流れているのは、「諦めないことの大切さ」だったりすると思っていて、それってどんな小説や映画やドラマでもテーマになりがちな、多くの人が共感・感動できる主題である。

 

ゾンビランドサガにも、そのような普遍的なテーマがある。それが何かは最後まで見ないと断定はできないかもしれないけど。

そして時には、きっと、泣けるような展開にもなるだろう。(既に第二話の後半で、ちょっと泣きそうになった。)

 

喜怒哀楽の全てが、ごった煮なんですね。

怖くて可愛くて悲しくて楽しい、本作品は色んな側面の魅力を持っていると思う。

だから、誰が見ても楽しい作品になるはずだ。

 

町おこしアイドルグループの苦悩と葛藤

今のところ、基本的に描かれていくのは町おこしアイドルグループの苦悩と葛藤。

グループ内には色んな性格の女の子がいて、各々が主張をぶつけ、理解し合い、精神的に成長していく。

つい前期も「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」が人気を博していたけれど、ゾンビランドサガも似たようなもんじゃないのか。

 

ただし「町おこし」というキーワードが入ってくると、より似たようなストーリーのアニメが最近あったことを思い出す。

お仕事シリーズの三作目として去年あたりに放送されていた、P.A.WORKS の「サクラクエスト」だ。

 

ゾンビランドサガを見てしまうと、「サクラクエスト」は随分と真面目に町おこしをやろうとしていたんだな、と思ってしまう。

ゾンビランドサガの方が圧倒的に、ふざけている。

しかし何だろう、ゾンビランドサガの方が…もちろん実在する佐賀県を描いているからというのも当然だけど、すごく可能性を感じるんですよね。

こりゃあ町おこるわ、という感じで。

 

例えば、どこかノスタルジックな曲調のED に登場する「COFFE SHOP ボガ」の絵が気になっている視聴者はいないだろうか。

何故か分からないけど気になってしまった私は調べてみた。

そしたら、こんな記事が出てくるんですよね。

 

これ完全にCOFFE SHOP ボガじゃん。というか、第二話で三人が歩いてた商店街だよね?

知らないけど知ってるよ。純喫茶は好きだし、行ってみたい。

これが聖地巡礼というやつである。

 

他にも、本作品の舞台の一つとなる不気味な洋館だって、佐賀県唐津市に実在する歴史民俗資料館とのこと。

もう聖地巡礼しちゃってる人いるし。すごいな。

 

ん?唐津市?…って、つい最近、何かのアニメの舞台になってなかったっけ?

そう、「ユーリ!!! on ICE」だ。ちなみに「ユーリ!!! on ICE」のアニメーション制作も、本作品と同じMAPPA です。

そういうことなんですね。

 

ゾンビはアイドルの夢を見るか

正直に言って我々は、もうアイドルをテーマにしたアニメには飽きていた。

ぶっちゃけ私としては、アイカツシリーズとラブライブシリーズだけやっていれば良いのである。

他に関しては暫くの間、やすらかに眠っておいて頂きたかった。

 

そこに突如として現れたゾンビ。死してなお、我々にアイドルを押し付けようというのか。

しかし面白い。これは半端なく面白い。

油断していたところを後ろからハンマーでぶん殴られたような気分である。

 

この作品が今後、どこまで真摯にアイドルと向き合い、夢と希望と感動を与えてくれるかが非常に楽しみだ。

我々はアイドルをテーマにしたアニメが、どのような展開で進んでいくかを何となく知っている。

そのテンプレにどの程度まで寄り添い、裏切っていくんだろうか。

 

アイドルは死なない。

いや、死してなお、アイドルなのであった。