アニメ感想:ハッピーシュガーライフ(2018年・夏)ー 全員異常者。怖すぎて目が離せない怪作
ハッピーシュガーライフ。なんと凶悪なタイトルであることか。
この作品は2018年の夏アニメの中で最も目が離せない、戦慄のジェットコースター・アニメとして、私の記憶に残るだろう。
怖すぎる。このアニメは怖すぎるよ。簡単に言うと「ひぐらしのなく頃に」より怖いです。
絶賛放送中で、この記事を書いている今は10話まで終わっている。
それにしても9話は酷かった。称賛の意味で、本当に酷かった。
このアニメは話が進んでいくにつれ、最初はドキドキ・ハラハラだった展開が、段々ともう陰惨・トラウマのレベルの展開になってきて、特に9話は見るのが若干しんどい。
ちなみにジェットコースター・アニメとは、私が勝手に命名したカテゴリであって、一般的なものではない。
ジェットコースターのように「わー!」と言っていれば一瞬で時間が過ぎてしまうような、撮り溜めた後の一気見に適したタイプの作品を、私が勝手にジェットコースター・アニメと呼んでいる。
同じようなジェットコースター・アニメの類に「Another」という作品があって、割と記憶に残っている。しかし「Another」は、まだスカッと終わった方だと思うよ。
「ハッピーシュガーライフ」は、もうスカッと終わりようがないと思う。本当にどうしようもない作品だ。
もちろん称賛の意味を込めて、どうしようもない作品だと言っている。
目次
あらすじとか
女子高生の松坂さとう(さとちゃん)と、年齢不詳の子供である神戸しお(しおちゃん)は、マンションの一室で二人だけの同居生活を送っている。
松坂さとうは、「しおちゃんのためなら、どんなことだってできる」女の子。神戸しおも、「さとちゃんが大好き」な子供。
怖い、と煽っているものだから、もうこの辺で想像つきますよね。
この不可解なプロフィールの同居人の組み合わせに加えて、松坂さとうは神戸しおのためなら「どんなことだってできる」んです。
そして、この作品には他にも登場人物が多く登場するんだけど、もう殆ど全員が異常者。一部の例外を除いて、大体が異常者もしくは精神的に不安定なのね。
それらの異常者の心の声や、彼らが異常な振る舞いを見せるようになった背景などが、けっこう丁寧に、というか執拗に描かれていくのが「ハッピーシュガーライフ」の特徴の一つだと思う。
このアニメは、精神描写が非常に多い。
視点をコロコロと変えながらキャラクター各々の内面を描き続けていくスタイルのストーリー進行なので、物語が加速するにつれて見るのが辛くなってくる。
これは覚悟して見なければ、途中で辛くなって離脱する視聴者が出るレベルだと思う。
「ハッピーシュガーライフ」が持つ怖さとは、幽霊とか猟奇殺人というように分かりやすい怖さではないのだ。
もっと視聴者の内面に迫る、ある意味リアルな怖さなんですね。
キツすぎるギャップが生み出す恐怖
ホラー系の作品というのは基本的に「これは怖い作品ですよ」というサインを、予め表現しているものが多い。
例えば「ひぐらしのなく頃に」も「Another」も、そもそも作品タイトルのロゴタイプからして、ドロドロした雰囲気を醸し出している。
しかし「ハッピーシュガーライフ」は、そうではない。
原作が書店に並んでいるのを見たことがある人なら分かると思うけど、作品タイトル通りハッピーでシュガーな感じの装丁になっている。
原作の装丁も、アニメ版のOP も、よく見れば「なんかおかしい」ことに気がつくことはできるかもしれないが、確信が持てるほどではないはずだ。
また作品の内容も、松坂さとうが「ハッピーシュガーライフ」と定義する神戸しおとの同居生活と、その部屋の外で描かれる様々な異常者との駆け引きの描き方のギャップが激しすぎる。
「最高に幸せ」と「邪魔したら殺すぞ」のギャップが強すぎて、見ているとクラクラするのだ。
これは最初、明度の差が強すぎる、白と黒のコントラストが強すぎる、そこが作品の特徴である、と思ってしまう。
しかしストーリーが進むにつれ、いやどっちも黒じゃん、と気づいてしまう。
実は白のように描かれていたものは、黒よりも更に黒くグロデスクであり、そこもギャップを感じるポイントだ。
抽象的な例えになってしまったけど、この辺がとにかく見ていて重いのである。
リアルな異常者の視点
「ハッピーシュガーライフ」を見ていると、異常者の視点って、本当にこういうものかもしれない、と思う。
そこが普通のホラー系の作品とは違って、「ハッピーシュガーライフ」に一種のリアリティを与えていると感じる。
少なくとも松坂さとうにとって、神戸しおとの不自然な同居生活は、特に異常なことではない。ハッピーでシュガーと定義するあたり、もうどうしようもなく理想的で、当たり前なんだろう。
というか、そうでもないと、こんなことできないですよね。
どこかで異常だと自覚していたら、恐怖が先に立つはずで、もっと言動に迷いが生じても良いはずだ。
しかし松坂さとうには迷いが殆ど無い。松坂さとうが慌てたり焦ったりする状況は、神戸しおの言動によってしか、引き起こされることがない。
松坂さとうにとって、神戸しおは文字通り「神様」なのだ。
神は正しい。神のためなら何でもできる。
これって、我々の日常でも、ニュース番組の中で毎日のように起こっている出来事じゃないですか。
それにしても、何度も言うけど9話は酷いよ。
よくある想像に易い展開とはいえ、この作品で、これをやるのは、倫理的にどうなのっていうレベルだったよ。
9話で、この作品は本当に真っ黒になった。ここからは僅かな光も届かない、どん底で泥沼の闇に突入だ。
最終話に向けて、あと一人は誰だ
このアニメのOP で、カラフルなゴミ袋が「3つある」ことが、個人的に気になっている。
一つは最初から誰のものか想像がついている。もう一つは、前述の通りだ。
では、あと一人は誰なのか?
考え過ぎと言われればそれまでだろうけど、この作品が最終話に辿り着くまでに、あと一つぐらいはゴミ袋が増えるはずなんですよね。
それがもし、私の予想通りだったら、この作品は本当に救いようがない。
ものすごいクライマックスを迎えるに違いない。
もはやここまで見てきた私としては、予想通りであって欲しいと、少し期待してしまう。
突き抜けろ。どこまでも黒く、重く、トラウマティックな作品として、深夜アニメ史上に名を残して欲しい。
その時、私は間違っても良い感想を、この作品には抱かないだろうけど。
TVアニメ『ハッピーシュガーライフ』予告CM第1弾-甘い篇・A-/2018年7月より、MBS・TBS・BS-TBS”アニメイズム”枠にて放送開始