アニメ感想:アトム ザ・ビギニング(2017年・春)ー ロボットが心を獲得するまでの物語


2017年4月新番組アニメ「アトム ザ・ビギニング」PV第2弾

 

推薦度:B

 

 

この一年ほど、IT・WEB 業界では、人工知能・AI やら深層学習やらが大層な話題になっている。それが面白くて、私も去年から関連書籍を10冊以上は読んでいる。

「深層学習」の発達によって、機械的な知能は大きく進化した。パターン認識の精度が飛躍的に高まった結果、人間の限界を超えた先の一手に辿り着いたのが、Google DeepMind のコンピュータ囲碁プログラム、Alpha Go だ。

 

しかしAlpha Go は、喋らないし人間の言葉を理解しない。良い人と悪い人の見分けもつかない。空を飛び回ることもなければ、マシンガンを搭載してもいない。そんなことができるようになるには、「鉄腕アトム」の時代まで待たなければならないのだ。

 

アトム ザ・ビギニング」は、後にアトムの生みの親となる天才博士・天馬と、アトムの育ての親となる天才博士・お茶の水の、友情の物語…?だったんだろうか。

まあ表向きはそうだったし、最後も結局それっぽかったので、一応そういうことなんだろう。

 

しかし特に後半は、二人が開発した「ベヴストザイン」という人工知能システムに焦点が当たっていて、最初の頃の二人は「俺達のA-106(エーテンシックス)」と言っていたはずなのに、ロボレスが始まった辺りから「俺達のベヴストザイン」と言うことが多くなっていた。

 

ベブストザインは、なんかよく分からんけど、とにかく凄い人工知能システム。

ロボットに「心を持たせること」がコンセプトっぽい。お茶の水の方が開発したんだろうか。

 

そのベヴストザインが搭載されたマシンであるA106 は、ロボレスの前半から、自らの生みの親の一人である天馬の「相手のロボットをぶっ壊せ」という命令に、反抗する。

自我の形成に欠かせない、反抗期というやつですね。

一回戦でも二回戦でも天馬の命令に反抗し、相手のロボットを傷つけることなく勝利していくA106 の姿に、最初は「つまらない」と野次を飛ばしていた観客が、次第にA106 を応援するようになる。

頑なに相手を傷つけることを避けるA106 の中に、観客は「心」を見出すのだ。

 

終戦が終わった後にロロに向かって「俺の勝ちだ!」と宣言した時の天馬は、まだ、その勝因に気づいていないんじゃないだろうか。

宿敵マルスのシステムダウンは、他でもないA106 による対話の意思表示がきっかけである。

A106 は自我を獲得し、他社との対話を望む人工知能にまで成長した。

しかし、マルスはまだそこまで辿り着くことができていない。故にA106 の言動が理解できず、処理し切れず、システムダウンしたんだと思う。

だから「べヴストザインが勝った」のであり、そういう意味での勝利なのだ。

最終話で天馬は、その本当の意味に気づいたような言動を見せる。

 

こんな感じで「アトム ザ・ビギニング」は、どちらかと言うと、ロボットが心を獲得するまでの物語だ。

昨今の人工知能やらAI やらも心理学に言及している書籍が実に多いため、そっちの視点で見た方が面白いかもしれない。

 

もちろん、若かりし天馬博士はかっこいいし、お茶の水博士は全然かっこよくないところや、単純なロボットアニメとして見てもA106 のパンチのギミック等、楽しめるところは十分にあるだろう。

そこはやっぱり安定の(?)NHK。良い仕事をしていらっしゃいます。